お仕事日録

あいちゃんは今お父様の腕の中。

猫のあいちゃんが旅立ちました。御年二十歳。老衰でした。名前は「あい」ですが、お耳の先がピンと張ったとっても凛々しい男の子です。ご自宅にお伺いすると奥様が一人お待ちでした。通されたお部屋の中央にはあいちゃんが眠っています。右手の仏壇の隣にはご主人の遺影。。 正面の大きな音響機器からはクラシック音楽が流れています。ご主人が亡くなられて以降、奥様はひとりこのご自宅でお住まいになられているようでした。否、正確にはひとりではなく、傍らには常にあいちゃんがいました。あいちゃんはご主人が亡くなられて以降もずっと奥様に寄り添い生きてきたのです。

 

 

ご主人が元気な頃は、旅行やドライブにはいつも一緒のあいちゃんでした。ご主人が入院している時には付き添われている奥様に代わりにお留守番をしていました。「愛ちゃんを今、この手で抱けるならこんな病気はすぐ治る」 ベッドの中のご主人はいつもそう言っておられたようです。でも、それは叶いませんでした。

 

あれから5年。あいちゃんはお父様の元に旅立ちました。大好きなクラシック音楽を聴きながら奥様の腕の中で静かに息を引き取りました。

 

 

奥様にはあいちゃんとの思い出のアルバムを見せていただきました。ご主人はカメラマンだったそうで素敵なお写真が数冊のアルバムに数多く収められています。貰われていた幼い時のもの、ご夫妻に連れ立って行った旅行中のもの、お家で寛いでいる時のもの等々、その名の通り、「愛」に溢れた想い出でいっぱいのアルバムです。 あいちゃんはどんな思いで奥様ひとり残して逝ったのか ‐ アルバムをに目を通しながらもそれを思うと、どこか不安で辛くなりました。

 

 

この度のご葬送は、過日ご葬送を賜わったちまんちゃんのお母様のご紹介でした。猫ちゃんが大好きなお友達つながりで私どもにお声掛けいただいたのです。お花に飾られた棺の中のあいちゃんのお写真をお撮りしてちまんちゃんのお母様にお送りしました。ちまんちゃんのお母様はそれを紙焼きしてあいちゃんのお母様にお渡しするのだそうです。ご自身同様、愛しい猫ちゃんを亡くし心痛めているあいちゃんのお母様に今こそ出来ることをしてあげたい ・・ ちまんちゃんのお母様の優しいお気持ちにジンときた次第です。

 

あいちゃんはお父様の腕の中、今、安らかに眠りにつきました。 そして、ひとたび目覚めた時はまた奥様の元へと降り立ちます。姿は変われども。。