茶トラ系の毛足の長い猫のきなこちゃんが天国へと旅立ちました。ご葬送に伺うときなこちゃんのお母様とご両親がお待ちでした。お通しいただいたのはお母様のお部屋。奥にはベッドが置かれています。きなこちゃんはその上で毛布に包まれて眠っていました。ママのベッドに潜り込むのが大好きだったきなこちゃん。だから、お拭き清めはそのままベッドの上で、同様にお別れ式もママの匂いのするベッドから下りることなく行いました。きなこちゃんをベットに安置したまま全てを執り行なったのは、“亡くなった今この瞬間においてなお、きなこちゃんが少しでも穏やかであってほしい” と願うお母様のご要望でもありました。
きなこちゃんには小さい頃、行方不明なったことがあります。鳥を追いかけて帰り道に迷ってしまったみたいでした。ご家族様が探し続けてから4か月後、お家の近くで見つかるのですが、それ以来 きなこちゃんは外に出ることを怖がるようになったのです。そして今日までお家の中でだけ過ごしてきました。
そんな猫生を生きてきたきなこちゃんでしたが、最近になってお顔に吹き出物ができました。心配になったお母様はお医者様に連れて行きます。病院に到着して間もなく、きなこちゃんはいきなり心臓発作を起こします。そしてそのまま息を引き取ってしまいました。突然のことにお母様は大変驚愕し動揺されたようでした。その喪失感たるや不意な交通事故で我が子を失うに似た感覚ではなかったかとも思えます。お母様には本当にお辛い出来事だったろうと想像に難くありません。ご葬送の間、お母様はお医者様に連れて行ったことの後悔の言葉を何度も口にしておられました。
お母様のご要望でお火葬はご自宅の敷地で行いました。お母様とご両親、そしてご近所の方も立ち会われました。ご家族様にお家で待機していただき、火番をしていると空から地上に「天使の階段」が下りてきました。その光の道は「ヤコブの階段」「ヤコブの梯子」などとも呼ばれます。ヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たとされる旧約聖書創世記28章12節の記述に由来します。
天使の階段を見て思います。きなこちゃんは天使とともに天国へと帰っていった。それは神様の思し召しだったと。 お母様は何度も悔やんでおりましたが、間違ってもそのことで自分を責めるようなことはなさらないでください。 天使に連れられて神様の身許に旅立ったきなこちゃんは遠く空からこれからもずっとお母様を見守り続けることだと思います。