トイプードルのあんずちゃんが旅立ちました。御年14歳でした。
亡くなられた事由についての欄には「不明」とありましたが、飼い主様におかれては、つい最近まで元気にしていたのにどうして、という思いがお有りだったのではなかろうかと存じます。多くのペットちゃんをお見送りさせていただいてきた私どもですが、その経験で言うと老衰で亡くなるペットちゃんの多くはあんずちゃんのように急に旅立っていくことが少なからずあるのです。あんずちゃん。14年間、ほんとうに頑張りましたね。
ご葬儀はご依頼をいただいた日の翌々日。飼い主様にはご子息がお二人おられるのですが、そのおひとりがご自宅に戻られるのを待って、とのことで二日後となりました。ご兄弟お二人にとってあんずちゃんは三兄妹の末の可愛い妹でした。お母様もまた仔犬だったあんずちゃんを三人目の一人娘として迎えられました。お母様には昨日のことのように鮮明な思い出です。
そして幾年月。あんずお嬢ちゃんはご家族皆の輪の中心となって楽しく過ごしてまいりました。時の経過とともにご子息様も成人を迎えられ、おそらく勉学やお仕事などでお家を離れることが多くなり、あんずちゃんも少なからず寂しい思いもしていたのでしょう。それでも時折、お顔を見せに戻ってこられるご子息様方に会って元気を取り戻していたのです。
実を申しますと、あんずちゃんのご家族はつい2ケ月前にご祖母様を亡くされたばかりでした。ご家族様にはそのお哀しみ如何ばかりかと存じます。その深い悲しみのなかにあって追い討ちをかけるかのようにまたしても家族の一員であるあんずちゃんのお旅立ち、ご家族様にはお心の持ちようも定まらないのでは と案じ申し上げるばかりです。
ご家族様には大変辛い出来事の連続でした。それでも出来ればご家族様にはこう考えてほしいです。あんずちゃんの気持ちをして、「あんずはおばあちゃまが寂しくないように旅立っていったんだ。おばあちゃまもあんずももう大丈夫。寂しくないよ。だから皆も寂しがらないで 」と。おばあちゃまを亡くして悲嘆にくれるご家族にあんずちゃんがそう言い残したかったのかなとも思われて仕方ないのです。
お見送りの日になりました。陽が傾く頃にご自宅を訪ねました。お母様とご子息がお待ちでした。私どもが到着するまでの間にご家族の皆様にはゆっくりとお別れされたことと思います。お火葬はご自宅を離れて別の場所でとり行います。ご家族様とあんずちゃんはここでお別れし、私どもがあんずちゃんをお預かりする形でお火葬に向かうのです。
ご自宅前での最後のお別れ、そしてご出棺。ご家族様を後にお火葬車は走り出します。杏色の大きな夕日が沈んでゆきます。あんずちゃんのご家族様への思いのようにそれはそれは大きい夕日ですありました。あんずちゃん!これは君からご家族様への感謝の印なのですね。
ご冥福を心よりお祈り申し上げます。