スカイブルーの瞳を持ち、真っ白な被毛を全身に蓄えてはいるものの、右半身の一部と尻尾にトラ猫の名残りがある かい君がここに旅立ちました。享年15歳でした。
ご家族様がかい君と出逢ったのはお嬢様が小学生の高学年の時でした。空のように美しいブルーの瞳と真っ白な姿にご家族は一目惚れ、5人家族の末っ子としてお迎えされたのです。そして月日が流れ、小さく可愛かったかい君はやがてハンサムな猫へと成長しました。
かい君はとても内弁慶で、家族以外の人が訪れるとさっと隠れてしまうほどの人見知り。警戒心が少なからず強いのにはその生い立ちに訳があるみたいです。実はかい君、生まれたばかりの頃に街のヤンチャ坊主たちに母猫と一緒のところを離れ離れにされてしまい、その後、巡り巡って今のご家族の元にやってきたのです。もしかしたら人見知りな性格はそんなところに起因しているのかもしれません。それでも愛を与えてくれるご家族のことが大好きで とっても甘え上手な一面もありました。
これまですこぶる健康に過ごしてきたかい君でしたが、昨年の夏に鼻血を出したかと思うと暫らくすると痙攣まで引き起こすようになりました。それ以来、体調を崩してしまっていたのです。一時は痙攣も治まって、ご家族様は「このまま元気になってくれるかな」と思われたのも束の間、再び症状がぶり返すと最後は自分のベッドで静かに息を引き取りました。かい君。最後は辛かったけど本当によく頑張った。ほんとうにお疲れさま。
寒波の最中、お火葬の日を迎えます。深々と雪が降る中、私どもはご自宅へと向かいました。私どもがお火葬車を停められるようにご家族様はあらかじめ玄関前のスペースの雪を掻いてくださっておられ、有難いことに難なく車を停めることが出来ました。ご自宅ではご家族皆様で「お拭き清めの儀」をとり行いました。「かい君、楽しい思い出をありがとう。本当に楽しかったよ」そんなお母様の優しい言葉が かい君を包み込み、ご出棺までのご家族とかい君の愛おしい時間が静かに流れていきました。
ご出棺。炉前でのかい君とご家族様の最後のお別れにふと空を見上げると雲間から青い空が覗いていました。なんと、かい君の瞳のような空が広がっていたのです。その青空はかい君が天国へと昇るまでの間、暫く続くとまた雪雲が空を隙間なく埋め尽くすのでした。あまりのタイムリーな青空の出現に驚くばかりの私達。神様がご家族に愛を与え続けたかい君を労い、「天国はこっちだよ」と手招きしているかのようでもありました。
ご焼骨が終わり、その後の「お骨上げの儀」はご自宅の中でとり行いました。ご家族様はひとつひとつお骨を確かめながら骨壺へとお収めくださいました。
お嬢様はかい君の爪や手指の小さなお骨をいくつか選んでカプセルホルダーに取り分けておられました。暫くしたらお嬢様はご実家を離れご遠方でお住まいになられるようですが、そのホルダーはお嬢様の大事なお守りとなるのです。これまでご家族様の愛を一身に受けていたかい君のお骨の力は小さなお骨であっても強大です。お守りとなったかい君はきっとその役目を果たさんとすることでしょう。かい君、どうかどうかお嬢様を見守っていてね。大好きなご家族との思い出を胸に今はゆっくり休んでね。