「うちの子が亡くなったんです。」
お電話口の女性は振り絞るような声で仰いました。お話をお聞きしているうちにお電話口の女性は2年前に私どもがお見送りのお手伝いをさせていただいたトイプードルのはなちゃんのお母さまだと分かりました。もしかして はなちゃんのご葬儀の時に私の膝の上に乗ってきたひなちゃんが、、、と頭を過ぎります。とりあえずお伺いする日時を取り決めさせていただき 私はお電話を切りました。
お約束当日、ご自宅にお伺いすると、やはり 私の不安は的中、はなちゃんより一回り小さかったひなちゃんがさらに小さく細くなってお母さまのベッドの上で毛布に包まれ安らかなお顔で横たわっていました。お部屋の奥に目をやると机上にはお骨壺。あれは確かにはなちゃんのお骨壺です。はなちゃんの遺影が入った写真立てに目を向ける私どもにお母さまは「今も手放すことが出来なくて・・」とぽつりと仰いました。
ママのはなちゃんが亡くなってからこの2年、ひなちゃんは優しいお母さまと一緒にはなちゃんのいない寂しさを懸命に乗り越えてまいりました。しかしながら、ひなちゃん自身もまた白内障を患い目が見えなくなったり 5年前に手術した股関節が悪化したりと加齢とともに徐々に体が弱くなってきておりました。はなちゃんのご葬儀の時には、股関節の手術をした後とは思えないほど歩き回っていたひなちゃんでしたが。。やはり老犬における2年という月日は人の10年、20年にも匹敵するのでしょうか、最後は老衰によりこの世を去りました。
ひなちゃんはこの2年、本当によく頑張りました。もしかすると、天上のはなちゃんがひなちゃんに「少しでもお母さんの側にいてあげてね」と言い残していたのでしょうか。あるいは、ひなちゃん自身がお母さんを悲しませたくないとの思いでママに会う日を遅らせていたのかもしれません。命が尽きようとするここ数日もひなちゃんは頑張り続け、お母さまの大切なお仕事の日を避けるようにして旅立っていきました。お火葬ははなちゃんの時と同様、ご自宅のカーポートでとり行いました。その後、ご自宅の二階で小学5年生のご子息とお母さまでお骨を上げられました。しっかりとお母さまをサポートしていた僕ちゃん。 この日、僕ちゃんはこの度のことで悲しむお母さまをずっと励されていました。「悲しんでばかりいたらダメだよ。前を向いて。」 と。。なんと頼もしい僕ちゃんでしょう。
ひなちゃん。お母さまの事、僕ちゃんがいるから安心していいと思います。今は、ママのお隣でゆっくりと休んでくださいね。