お仕事日録

猫のルルちゃん 早すぎるお別れ

猫のルルちゃんが旅立ちました。飼い主様からお電話いただいたのは亡くなったその日の夕刻。なるべく早くお火葬をお願いしたいとのご要望でありました。

 

 

ご自宅は千里浜ドライブウエイの内陸側、子浦川ほとりの住宅街の一角にありました。到着したのは8時半。ご自宅では若いご主人がおひとりお待ちでした。お主人のお隣のお棺箱には小猫ちゃんが眠っていました。お拭き清めに小猫のお身体を取り上げると小柄ながらもしなやかな体躯に美しい薄茶の毛並みのとっても綺麗な猫ちゃんでした。私は思わずその美しさに声を上げてしまいます。が、その直後いつもながらではありますが、自らの言動を反省をすることとなるのです。後刻、ご主人にご記入いただいたお申込書にはお名前がルル、性別には男の子とあり、それはいいとしても 年齢の欄には0歳(5ケ月)とあったのです。年若いペットちゃんは概ね被毛にも艶があってまるで生きているのではと見紛うほどに美しいことが多いのです。そのことについては経験上よく存しております。しかし、そのことを忘れて飼い主様のお気持ちにも気付かず我思うままに反応してしまう私のなんと愚かで浅はかなことか。ご家族様には大変申し訳なく内省しきりであります。どうかどうかお許しください。

 

ルルちゃんはFIPに感染していたのでした。FIP(猫伝染性腹膜炎)とは幼猫に発症することのあるウイルス感染症です。1歳前後の幼い猫に好発することが特徴で、FIPウイルス=猫コロナウイルスにより発症します。猫のコロナウイルスは多くの猫が保有しており、そうしたコロナウイルスを腸コロナウイルスと呼びます。コロナウイルス自体はほとんど無害と考えられていますが、幼い猫ではこの無害であるはずの腸コロナウイルスが時に強毒化することがあるのです。いわゆる突然変異。この突然変異で生じたウイルスがFIPウイルスと呼ばれ致命的な症状を呈します。ほぼ100%死に至る病気で恐ろしく進行も早いのです。治療だけでなく症状も多岐にわたるため診断も非常に難しく、もたつくとあっという間に手遅れになる本当に怖い病気なのです。ルルちゃんにおかれては不運としか言いようがなく本当に悔やまれてなりません。ルルちゃん、ほんとうに辛かったね。どうか天国ではいっぱい食べて、いっぱい遊んでね。

 

お火葬はご自宅を離れて行うことになりました。ご自宅でのお火葬も充分なスペースがありましたが、暫くしてお仕事から戻られる奥様のお気持ちを考えてご主人は別の場所へ移動してお火葬をとり行うことにされたのです。私どもはその日のうちにご焼骨させていただき、ご返骨は翌日のお昼ごろにお伺いさせていただくことになりました。もちろんその日のうちにご返骨は可能でしたが、翌日でも構わないとのことでしたのでお骨を私どもで一晩お預かりすることになりました。帰りが夜遅くなっては申し訳ないとご主人が私どもを気遣ってくれたものと存じます。

 

ルルちゃんをお預かりしてご自宅を出立。子浦の川下からの生暖かい風が目に沁みるような夜です。バックミラーには寂しそうなご主人の影。ルルちゃん。明日には大好きな我が家、大好きなパパとママの元に帰してあげるから、ほんの一晩だけ我慢してね。