お仕事日録

「星に願いを」 トイプードル、との君の旅立ち

小柄なトイプードル、との君がご家族の深い愛に包まれながら旅立ちました。

 

 

ご自宅に伺うと との君は美しい祭壇の前でまるで眠っているかのように横たわっていました。厳かな雰囲気に包まれた室内にはママ様と との君との最後の時間だけが静かに流れていました。ママ様のご友人お二方もママ様のお気持ちに寄り添いながら との君を偲んでおられました。

 

との君は18歳とご長寿でしたが、これまで大きな病気をすることもなくとても元気に過ごしてきました。少し歯に疾患はあったものの ママ様の深い愛情と細やかなお世話のおかげで穏やかで幸せな犬生を送っていました。そんなとの君が、昨日、老衰により天へと召されていったのです。との君、このお歳までほんとうによく頑張りました。謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

お拭き清めの準備を始めると、ママ様が、との君が赤ちゃんの頃から聴いていたという「星に願いを」のオルゴールをかけられました。巻かれたスプリングが緩み美しい音色を奏でるオルゴール。澄んだ響きとともにとの君の寝息が聞こえてきそう。それはまるで いつものおやすみの時間のようであり、リラックスしているひとときのようでもありました。「最期の時も安心して旅立てるように」というママ様の、との君への優しい想いがとの君ばかりか私どもにもひしと伝わってまいります。きっと との君は今この時もまた美しい音色に包まれて、ママの胸に抱かれて眠る時のように心安らかにしていることでしょう。

 

ご出棺の時。空からは雨がしとしとと降り注いでいました。最後のお別れは との君がママ様とのお別れに声も出さずに泣いているかのようなしめやかさに包まれていました。ママ様とご友人方を玄関前に残してご自宅を後にするお火葬車。バックミラーには雨粒が頬伝う涙のように張り付いては流れ、微かに映るママ様の姿も次第に小さくなっていきました。ママが心配なんだね、との君は。でもきっと大丈夫。それでもね、ママがあなたのいない寂しさに哀しい夜を過ごしているならどうかどうか星に願いをかけてみて。星は大好きなママの明日をきっと光照らしてくれると思うから。

 

ママに出逢えてほんとうに幸せでしたね、との君。