フレンチブルドッグ、14歳の男の子 モモくんが亡くなりました。
遡ること 11年。12月のとある極寒の日、金沢の海岸で1匹のワンちゃんが保護されます。海岸近くの施設で 猫用のゲージに入れられて飼い主を待つもついに現れず、飼ってくれる人が見つからなければ保健所に連れて行くしかない、そんなところまで話は進んでいました。
偶然、通りかかり、そのことを耳にしたお母さまは、是非、引き取りたいと申し出られました。どんな犬種であれ、幸せに育ててあげたい。お母さまはそのお気持ちだけでゲージの中をはっきりと確認しないままにお家に連れて帰られたのでした。お母さまが、ゲージの中のワンちゃんがフレンチブルドッグだと知ったのはオシッコの我慢が限界になったワンちゃんがゲージから飛び出てきた時でした。
あなた、モモちゃんなの?お母さまとお父さまはゲージから飛び出てきたワンちゃんを目の当たりにして大変驚きました。実を言うと、こちらのご夫妻は、2年半前にモモという名前の愛犬 雌のフレンチブルドッグを亡くし、ずっと今日まで寂しい思いをされていたのです。そこに現れたのがこの迷子のフレンチブルドッグ!!なんという偶然でしょうか。
お母さまは早速、以前からお世話になっていた動物病院にこの迷子ちゃんを連れていきました。検査結果はすこぶる健康体、年齢はおそらく2~3歳だろうと診断されるのでした。先代犬も診ていた先生もまた「この子はあのモモちゃんのまさに生まれ変わりですね」と仰られたのでした。
ご夫妻は、飼い主さまが探しておられるかもしれないと警察や保護犬協会にも連絡されるなど手を尽くして元の主(あるじ)を探されたようですが、どちらからもとうとう連絡がありませんでした。こうして先代犬のモモちゃんとお顔もそっくりなこの迷子ちゃん。男の子ではありましたが、先代犬と同じ「モモ」と命名され、晴れてこちらのご夫妻ご家族の一員になったのです。
お家にやってきたモモくん、最初はどこか遠慮しがちにご家族さまの様子を窺っていましたが、このお家の皆には安心して甘えて良いのだと分かると、以前の飼い主さまから貰ったお名前があるはずなのに「モモ!」と呼ぶと、よちよちと愛らしく駆け寄ってきてくれるようになりました。
モモくんはとっても穏やかな性格だったそうです。大好きな食べ物やおもちゃを取り上げようとしても怒ったりするようなこともなく、されるままに受け入れるのでした。もしかしたらあの日の恩義をどこか感じているのかもしれない。。お父さまはそう考えておられたみたいです。
ご夫妻のお住まいになられる母屋を挟むようにご子息さま方のご家族のお家が左右に2棟、同じ敷地に建っているのですが、モモくんはご長男のお家に遊びに行くのが日課になっていました。午後に出かけてひと息 遊んで、夜には本宅に戻るといった具合です。
お火葬には、ご長男宅のご家族様、ご次男宅のご家族様、ご夫妻のお孫さん達も皆、お揃いでお立合いいただきました。煙が立ちのぼりモモ君が旅立つと、奥様は崩れるように地に伏して嗚咽され、ご主人は自らも涙を堪えながらもそんな奥様の肩にそっと手を伸ばし優しく労わっておられました。こんなにも愛されて。。ほんとうに幸せだったんだね、モモくん!
ご家族皆に可愛がられ、ご家族皆に癒しを与えた素敵な11年。想い出でいっぱいの11年。そう、モモ君には、あの寒くて怖かったあの日のことを忘れるくらいに幸せな11年だったのです。モモくんのご冥福を心よりお祈りいたします。