ポメラニアンのこたろう君が旅立ちました。享年14歳、老衰でした。
つい最近までお歳なりに、ではありますが、元気に過ごし、ご飯も自力で食べていたのです。それが急に動かなくなってしまい、今日、この日を迎えるのでした。ママさんはそのようなことがあるのか少し気になっておられるようでしたが、実際、重い病気にかかって亡くなってしまう子より老衰で自然に生命力を失くしていく子のほうがこたろう君のような最期を迎えるようにも思えるのです。人から見れば急に元気がなくなるようにみえますが、人とワンちゃんの生涯時間の長さの違いを考えれば、一概に「あっという間」ということではないのかもしれません。
こたろう君は日中、お爺ちゃまとお婆ちゃまと一緒に過ごしていました。パパさんとママさんはお仕事で忙しく、お爺ちゃまは日中、デイサービスに出かけられるので、いつもお婆ちゃまとふたりでご家族皆の帰りを待っていたのです。お爺ちゃまを迎えに来るデイサービスのお迎えの方々にもこたろう君は人気で、居間の窓からお爺ちゃんを送り出すこたろう君の愛らしい姿に誰もが自然と笑顔になるのでした。
こたろう君には冒険好きな一面もありました。3回もお家から脱走したことがあるのだとか。居間の窓の網戸を破って高台にある大学キャンパスまで行ったこともあります。ご自宅から1キロ弱の距離とはいえ かなり急な坂道です。好奇心旺盛でなければこんな小さな体で到底そこまではトライ出来ないようにも思えます。最後は、キャンパスをウロウロしているのはこたろう君ではないかとの学生さんの知らせがご家族の元に届き、泣く泣く連れ戻されたのだそう。
お火葬は居間から覗けるご自宅の駐車ポートでとり行いました。外に出られないお爺ちゃまとお婆ちゃまは居間でお別れし ママさんだけが屋外の炉前でお別れしました。お婆ちゃまは1階の居間の窓から、お爺ちゃまは普段は上がることのない2階の窓からこたろう君を見送りました。
春の風が優しく靡く青い空、こたろう君は天高く昇ってゆきます。まだ見ぬ天国は好奇心旺盛なこたろう君の目にはどのように映るのでしょうか。楽し気にお仲間たちと虹の広場を駆けるこたろう君も想像できます。菜の花揺れるこの場所をこたろう君はきっと大好きになるに違いありません。でも、もしかしたらもしかして彼の心のどこかには、またあの時のように家族の皆が懸命になって僕を探しお家に連れ戻してくれたら ― そんな微かな期待がそっと秘められているのかもしれません。
こたろう君のご冥福を心よりお祈りいたします。