お仕事日録

ミニチュアピンシャーのタクちゃんが旅立ちました

ミニチュアピンシャーのタクちゃんが旅立ちました。

 

タクちゃんは糖尿病を患っており、1日2回のインシュリン注射を欠かしませんでした。そんな大変な持病を抱えつつもタクちゃんはご家族様の愛情に支えられ、毎日を恙なく過ごしていたのです。

 

その日、タクちゃんはお水を飲んでは倒れ お水を飲んでは倒れを繰り返します。いつもとは違うタクちゃんの様子に飼い主様ご夫妻は心配になり奥様の従兄弟が経営される動物病院にタクちゃんを連れて行かれました。病院に向かうため車に乗せられたタクちゃん、ドライブに行けると思ったのでしょうか、普段の元気を取り戻し、お二人の間に腰を下ろして長い顎をお父様の肩にちょこんと乗せるとどこかウキウキした様子で流れる景色を楽しんでいたのです。

 

お父様、お母様とのドライブが大好きなタクちゃんでしたが、元気な頃からお出掛けする時には決まってお二人の間のその定位置を陣取り、お父様の肩に顎を乗せてドライブを楽しんでいたようです。しかしこのドライブがご夫妻にとってタクちゃんとの最後のドライブになってしまうとは。。

 

病院に着くとタクちゃんはこのドライブが楽しいドライブではなかった事に気付きます。タクちゃんは最初、病院の前で少し嫌がっていたようですが、大事をとってそのまま病院で預かり診療されることとなりました。そしてその日の事でした。病院からご夫妻にお電話があるのです。タクちゃんが今しがた亡くなったとのお知らせでした。

 

その時のご夫妻のお気持ちを思うと胸が痛みます。きっとご夫妻様には様々な思いが駆け巡っておられたのでないかと存じます。唯々、お悔やみ申し上げるばかりです。

 

私どもはタクちゃんが旅立ったその日の晩にご自宅にお伺いし 祭壇の用意をさせていただきました。お通夜ではご家族様にはお集まりいただき、「お拭き清めの儀」にはじまり、その後、お通夜の経が誦まれる中、ご焼香いただきました。最後にご家族様には夜通し十分にお別れなされますようお線香等の準備を整えさせていただきご自宅を後にしました。

 

二年前にお実母様を亡くされたお父様はいつも仏壇の前に座って毎朝、お参りされるのですが、タクちゃんはその隣のお座布団の上でお父様に静かに寄り添っていたといいます。お父様が大好きだったのですね。

 

お火葬当日は「お別れ式」をとり行い、その後、予定していたお火葬場所に向かいました。しかしながら先般の集中豪雨で予定していた場所まで通行出来ず、そこからほど近い場所に変更させていただきました。ご家族様は別の車でその場所までお越しいただき、お火葬が執り行われました。暑い最中にもかかわらずご家族様にはずっとお火葬をお見守りいただきました。その日も特別な暑さでご家族様は途中、私どものために冷たいお飲み物や体を冷やす凍ったボトル等を差し入れてくださいました。お辛い中にあってこうして私どもにまでお気遣いいただき申し訳なく存じます。ほんとうに有難うございました。ご夫妻のお人柄に触れさせていただき、こんなにも温かいご家族様に愛されたタクちゃん、それはそれはとっても幸せだったに違いありません。そうだよね、タクちゃん。

 

全てを終えて設えた祭壇を片付けるために再びご自宅に伺いました。タクちゃんは仏間の祭壇からご夫妻自らが設えた祭壇に移されていました。その祭壇はご家族様がいつも集うところのリビングダイニングに設えてあったのです。私どもはそれを見てとても優しい気持ちになりました。お骨壺に収められてはしまったものの、これからもご家族様の傍を片時も離れることはない、離されることはない。ご夫妻のタクちゃんへのそんなお気持ちが私の胸をジンとさせるのでした。

 

ご家族様にはご用命いただき有難うございました。あらためましてタクちゃんのご冥福をお祈り申し上げます。