黒と白の斑点が可愛い猫のチビ君が旅立ちました。猫ちゃんに多い病気、腎臓病によるものでした。
チビ君は15年前、おそらく生後1ケ月の頃だったのでしょう、こちらのお宅の玄関前に捨てられていました。飼い主様が仰るには、まるで捻じれたドーナツのようだったとのこと。やっとのことで生きている、まさにそんな感じだったといいます。
仔猫を偶然見つけることとなったお母様とお嬢様は玄関先にそっと咲いたこの小さな命を見捨てることなど出来ません。お二人はその仔猫をお家に迎え入れることにしました。お二人の懸命な看病、介護の結果、仔猫は元気を取り戻し、その後、チビと命名された仔猫は晴れてこちらのお宅のお家猫となったのです。拾われた当初から見受けられた左脚の障害は若干残ってはしまいましたが、仔猫はそんな不具合を抱えつつもスクスクと成猫へと成長していきました。
お二人は当時を振り返ります。いったい誰がこの可愛い仔猫を捨てて行ったのか。。お母様は薄々気付いていたようです。確信はありませんが、思しきその方の言動に思い当たる節があったようです。それでもお母様はその方に問うことはしませんでした。むしろ、お母様は「元の飼い主様にはこんな可愛い子を私たちのお家の前に捨てて行ってくれて、、チビ君には我が家に来てくれてほんとうにほんとうに感謝でした」と当時の思いを話してくださいました。
「お拭き清めの儀」に始まり「お別れのセレモニー」、「ご焼骨」、「お骨上げの儀」と式次第は進行してゆきました。お母様とお嬢様は最後までチビ君をお見守りくださいました。お別れのセレモニーでは、般若心経、舎利礼文、ご真言等の経が唱えられる中、お二人には心尽くしのご焼香をいただきました。
玄関前でのお火葬が始まりました。お母様は空を見上げて、チビ君が嬉しそうに空に駆け上がっていく姿が見えた、とふと口にされました。お母様には霊感がお有りとお嬢様からお聞きするに及んで、チビ君は今世、こちらのご家族に出逢えた幸せを噛みしめここに天へと旅立って行ったのだとしたら、、ご縁をいただいた私どもにとってもこれほど有難いことはありません。
こちらのお宅の前でチビ君の猫生は始まり お宅の前でその猫生を終えました。踏みにじられつつもそっと息をしていた雑草、そのひっそり咲いた小さな花は時を経て誇らしく見事なまでに大きな花を付けました。そう、チビ君はその猫生をかけてお二人の心に数えきれないたくさんの花々を付けたのです。
チビ君のご冥福を心よりお祈りいたします。