三毛猫のナナちゃんが8年の生涯を閉じました。ご家族様からお火葬のご依頼を受け、お住いのマンションへお伺いさせていただきました。お待ちになられていたのはご依頼主のご主人と高校生くらいの年頃のご子息。奥様はご旅行中でご不在でした。ここ数日、ナナちゃんの食欲もなくなり、最期は自分で頭を上げる事も出来ないくらいだったようです。
8年前。ある日、奥様が通りがかった道端でうろうろしている子猫を見つけました。捨てられたのだと奥様はすぐにお察しになられたようです。一度はその場をお離れになられた奥様でしたが、子猫のことを案じるあまり、今一度、その場所に戻られました。するとその子猫はやはり帰る所を失っているようでさっきと同じ場所に留まっていたのです。不憫に思った奥様はその子猫を連れて帰ることにしました。これがご家族とナナちゃんとの出逢いです。ナナちゃんはその後、ご夫妻、そして少年だったご子息とともに暮らしはじめ、晴れてご家族の一員となったのでした。
奥様におかれましては、ナナちゃんとの最後のお別れが出来ず、大変残念なお気持ちだったろうとお察しいたします。それでもご子息様にナナちゃんの美しい毛並みをさらに美しくお母様の分まで拭き清めていただきました。「拭き清め」は痛みを取り払って安らかに召されるための儀式。奥様がご不在の分、是非、ご子息にもお手伝いいただきたいとお願いしたのでした。お空のナナちゃんもすごく喜んでくれているのではないかと思います。
お火葬も無事終わり、お骨をご粉骨させていただきご自宅にお届けいたしました。帰りの車中から眺める夜の街なかは年末の慌ただしさに車の通行量も幾分多いように思えました。クリスマスももうすぐです。
そんななか、私の胸に漠然とした思いが過ぎります。その思いは、8年前、ひとつの小さな命を慮って行動されたこちらのご家族に対する尊敬からか、あるいはそうあってほしいと願う気持ちがそうさせるのかは分かりません。唯々、漠然とではありますが、もしかするとナナちゃんは自分を拾ってくれた奥様やご家族様に何がしかのプレゼントを届けるのではないかと。。。感謝の気持ちを伝えるための素敵な贈り物 ― 当然ですが、何かもいつかも分かろうはずがありません。でもそれはご家族だけにしか分からない幸せな出来事のような気がするのです。