お仕事日録

アビシニアンのハンサムボーイ 蓮君の旅立ち

アッシュグレーの被毛が美しいアビシニアンの蓮(れん)君が旅立ちました。

 

 

蓮君は、15年余、パパ様、ママ様、三姉弟(ご長女・ご次女・ご子息)と其々のご家族の皆に囲まれて一家のアイドルとして愛情いっぱいに過ごしてきました。

 

ご一家と蓮君との出遭いは、現在20歳になられるご長女のお嬢様が4歳の頃に飼っていたハムスターを見送った直後のことでした。寂しさを抱えていたご家族の前に蓮君が突如、現れたのです。当初は、全く迎えるつもりはなかったご家族様。しかながら、今ご家族様の眼前で小さなハンサムボーイが可愛い仕草で素敵な家族を探しているのです。こうなれば答えはひとつしかありません。「一緒に帰ろうね」誰からともなく声が上がります。ご家族様の心が決まった瞬間でした。

 

名前の「蓮」はお経に因んで付けられました。蓮くんは本当にお経が大好きで、その声が聞こえると何処にいても必ず飛んできたそうです。

 

腫瘍が出来て前脚を切断することになった時も驚くほど早く回復しました。治療のために二日に一度 遠方の病院へ通っていましたが、その時間もご家族様と蓮君にとっては大切なひとときでした。

 

蓮君は常に膝の具合の悪いママ様を気遣っていたみたいです。片方の前脚を失った後もママ様に呼ばれれば必ず応え、側らにそっと寄り添う優しい姿を見せてくれていました。

 

それはママ様の、最愛のパパ様が亡くなられた時も同様です。ご自宅に伺った際、横たわる蓮君の横にお父様のご遺影が置かれていましたが、蓮君は深い悲しみに打ちひしがられているママ様をこれまで自らが生きることで励まし続けていたのではないでしょうか。

 

そして蓮君はここにとうとうパパ様の元に旅立つ時を迎えました。パパ様の初盆のご法要を終えて蓮君は安心したようにご自宅でご長女に抱かれながら安らかに息を引き取るのでした。

 

お火葬は海の香りがする場所で執り行われました。ご納棺の折には、ママ様、ご長女とご主人様、ご夫妻のお嬢様、ご次女、ご子息と奥様、全員がお揃いになられました。

 

最期のお別れ。パパ様のお葬儀の時と同じようにご家族皆の蓮君を思う気持ちが一つになりました。蓮君はその思いをぎゅっと抱きしめると潮風に乗って夏の夕空に昇っていきます。

 

 

愛情いっぱいに包まれてきた蓮君。これからは、大好きなパパ様のお膝の上でご家族皆の安寧をきっときっと見守ってれることでしょう。蓮君、どうか今はゆっくりとお休みください。心よりご冥福をお祈りいたします。