お仕事日録

バロン君が残したもの

ひとつの小さな命が尽きました。その命が自らを燃やし続けて生み出してきたものはどこか形のないもの。それはいつしか静かに土壌に滲みて、その後 、少しづつ気化しながら周りの空気に融け込みます。

 

私たちがご依頼を受けてご自宅に伺うと、とても素敵なご家族がお待ちになっておられました。ご家族の傍らには、その命の持ち主、ミニチュアダックスフントのバロン君が静かに眠っていました。寝顔には天寿を全うした穏やかさが見て取れます。

 

ご主人と奥様、そしてご子息であるご立派な青年、お二方が見守るなか、ご清拭、お火葬と順次 執り行いました。電源もお借りする事が出来、ご焼骨後のご粉骨も滞りなく行えました。

 

この度のご葬送を通して、ご子息、お二人のお別れをされる真摯なお姿がとても印象的でした。バロン君の15年間燃やし続けた命の灰は着実にこちらのご家庭の空気へと沁みだしているかのように思えます。優しさ、いたわり、誠実さ・・・ やはり言葉では尽くせない形のないもの、それでいて、人が生きていくうえでかけがえないもの。人はそれを一括りに「愛」と呼んでいるのかもしれません。

 

バロン君が残したものは計り知れません。バロン君、有難うね。