お仕事日録

立ち合えなかったお嬢様

シーズーとトイプードルのミックス犬 ハッピーちゃんが旅立ちました。クルクルとした黒毛がとっても可愛いらしい13歳になる女の子です。ご自宅ではご主人と奥様、そして ご主人のご両親がお待ちになっておられました。

 

私どもがお拭き清めの準備に取りかかると、奥様は2階のお部屋に閉じこもっておられるお嬢様を呼びに行かれました。私どももお待ちしてはおりましたが、とうとう、最後までお嬢様は下りては来られず、 ご出棺時にもお顔をお見せになられることはありませんでした。いく度か2階へと呼びに行かれた奥様が残念そうに言われます。ハッピーちゃんが亡くなったことが娘にとってはショック過ぎてあまりに辛くどうしても立ち会うことが出来ないようだと —  と 申しますのは、実はハッピーちゃんはお嬢様の4歳の誕生日にご両親からお嬢様へと贈られたワンちゃんだったのです。お嬢様にとってはハッピーちゃんはかけがえのない姉妹のような存在だったのでしょう。ましてや多感なお年頃のお嬢様、とてもとても現実と向き合うことはできなかったみたいです。

 

 

お火葬はご自宅の前でとりおこないました。お火葬の最中もお嬢様が2階の窓から覗いてはくれまいかと ちらちら見上げましたが、お嬢様の姿は確認できませんでした。お嬢様には、最後に是非ハッピーちゃんにお声を掛けてほしいと私なりの思いはありましたが、ハッピーちゃんの死を受け入れたくないお気持ちは愛情が深ければ深いほど強いこともよく分かりますし、お嬢様にはお嬢様なりのお別れの仕方や心の整理もおありだと思います。今、まさに自室で、静かに去りゆくハッピーちゃんを忍び見送っておられるやもしれないとも思いました。総て、時間が必要。焦ってはいけませんし、焦る必要もありません。

 

ご焼骨を終えてお骨を状態を確認させていただくと、背骨から尾にかけての部分にいくつものとうもろこしの粒状の石のようなものが連なって見つかりました。石灰化して硬く残っています。この部分は腎臓から膀胱に至る尿路に当たることから、間違いなく尿路結石だと考えます。ハッピーちゃんは急に具合が悪くなり、血を吐いてその日のうちに亡くなったと奥様からお聞きしておりましたが、どうやらハッピーちゃんは長らく大きな石を内臓に抱えていたようです。

 

お申込書の病名が空欄になっておりましたのでご家族様のお気持ちを考えるとお伝えするべきか悩みましたが、やはり ペットちゃんとて家族の一員です。お知らせするべきと考え、そうさせていただきました。ご家族に心配はかけたくない - ハッピーちゃんは、その思いで、痛い、辛いを我慢していたのかもしれません。

 

最後に、お嬢様が一日も早くハッピーちゃんの死を受け入れることができますように。そして、共に過ごした楽しかった日々を良き想い出として笑顔で語れる日が訪れますように。 ハッピーちゃんもそう望んでいることでしょう。