ここは倶利伽羅峠にもほど近い山間の住宅街。猫のNANAちゃんが多臓器不全で亡くなりました。NANAちゃんは4年前に地域猫から保護されてこちらのお家の飼い猫になりました。「NANA」と名付けられたのは7月7日にご家族の元にやってきたからです。
「地域猫」とは、特定の飼い主ではなく、地域に暮らす人々によって去勢や避妊手術を受けたり、ご飯を与えられたりしている猫のことです。飼い主のいない猫でも、生きているんだから何かをしてあげたいと思っている人はたくさんいます。一方、飼い主のいない猫は迷惑だと思っている人もいます。地域には、猫が好きな人、無関心な人、嫌いあるいは苦手な人が混在して住んでいるのです。望まれない命は作らない、作らせない。でも、生まれてきた命はできるだけ長生きさせてあげたい。そんな思いを持つ方々が猫と地域の共生を目指して行っている活動が「地域猫活動」です。飼い主のいない猫を勝手気ままな「飼い主のいない猫」として放置するのではなく、猫の嫌いな人にもある程度、許容してもらえる「地域猫」として一定の管理をして見守っていこう、将来的には飼い主のいない猫を減らしていこう、という考えがこの活動の根底にあります。 NANAちゃんのようにしっかりした保護を行える人に貰われていくことはその目的、理念にも合致しており、猫ちゃん達にとっても幸せなのだろうと思います。
飼い主様ご夫妻のもとにやってきた当時のNANAちゃんはとても可愛い猫ちゃんでしたが、4年の時を経て、美しい大人の猫に成長しました。日本猫の血を引き継いでいると思われるその容姿は正統派美人ならぬ美猫の品と雰囲気を感じさせます。それにしてもNANAちゃんは4歳という若さ。ご主人が仰るには、NANAちゃんはガラスの腎臓を持っていて少しでも外から衝撃が加わると出血してしまうとのことでした。私どもも病気についてはよく存じ上げませんが、おそらく重い慢性の腎臓病を抱えていたのでしょう。腎臓機能の低下が他の臓器をも不全状態に陥らせ死に至らしめたのだと思います。こんなにも若い命を奪ってしまう猫の腎臓病、恨めしくて恨めしくてしょうがないです。
NANAちゃんには、にゃんこファミリーがいました。年下のチョコちゃん。そして同い年の猫ちゃんがもう一匹。皆、地域猫だった子供たちで、今もご夫妻の庇護のもと お家猫として過ごしています。にゃんこファミリー達は時々、喧嘩はしても優しいご夫妻に見守られるなか安心して過ごしてきました。
最後は辛い思いもしたけれど、ご夫妻が作ってくれた愛おしさの輪の中、同じ境遇の仲間とともに生きた4年間、NANAちゃんは幸せだったと思います。
お火葬はご自宅の駐車スぺースをお借りしました。ご納棺時にはぱらついていた雨も上がり、晴れ間から太陽がお顔を出しました。路傍の雪に陽の光が反射して周囲が明るくなりました。NANAちゃんがご夫妻に感謝の気持ちを伝えているようです。
NANAちゃんのご冥福をお祈りいたします。