黒猫のしずくちゃん、5歳が旅立ちました。
腎臓が悪くなっていると獣医さんに告げられて間もなくのことでした。15歳以上の猫ちゃんの80%以上が罹患してしまうといわれる腎臓病ですが、しずくちゃんのように若年で発症してしまうケースも決して少なくはないのです。
しずくちゃんは譲渡会で飼い主様ご夫妻にご縁があってこちらのお宅にやってきました。しずくちゃんは先住猫のくりちゃんともすぐに仲良しになりました。しずくちゃんとくりちゃんはお歳も近くさながら気の置けない姉妹のように育ちました。
しづくちゃんにはおちょこちょいなところがありました。その一方でとても賢い面も持ち合わせていました。慌てて階段を転げ落ちたり、押入れの襖を開けて入ったり、器用に扉を開けて別部屋に侵入したり。ある時には窓のカーテンによじ登り レールからカーテンを全て外してしまうこともありました。カーテンの一件でもお分かりのようにしずくちゃん、総じて高いところが大好きなのです。こちらのお家にはしづくちゃんのためにお父様が手作りされた二階建てのお家(ゲージ)があるのですが、お家の中のハンモックではなく屋上に置かれているお籠の中がしずくちゃんのお気に入りの場所でした。
お母様はそんなしずくちゃんをおちょこちょいと言い表されましたが、しずくちゃんのお茶目なくらい好奇心が旺盛で活発な性格をもって可愛さ込めてお母様なりにそう仰ったのだろうと思います。
お通夜の夜でした。しずくちゃんが安置されているお部屋に行きたいとくりちゃんはご夫妻を何度も呼びにきました。しずくちゃん、くりちゃん其々のお家(ゲージ)があるお部屋でいつも一緒に過ごしていたふたりです。くりちゃんはしずくちゃんの姿がないと不安なのです。ご夫妻はたまらずくりちゃんをしずくちゃんの眠るお部屋へと連れていかれました。くりちゃんはお部屋に入った途端、「どうしたの、しづくちゃん。遊ぼうよ!遊ぼうよ!」と言わんばかりにしずくちゃんの周りをぐるぐると何度も回りはじめたのです。
お火葬はご自宅を離れて緑豊かな場所でとり行いました。ご夫妻様にあられては、お留守番のくりちゃんが気がかりではありましたが、火が消えるまでしづくちゃんの側を離れずお見送りお立ち合いいただきました。小雨に木々の緑が雨の雫で濡れそぼっています。それはさながらしずくちゃんの涙のようにも思えるのでした。
しずくちゃん。どうかご夫妻を、くりちゃんを遠い空の向こうからお見守りくださいますように。
「お別れの 深き緑に 雨雫 零れてもまた 零れてもまた」
ご夫妻とのお別れに寂しさのあまり緑繁る木立ちの中で泣き続けるしずくちゃんを想像し、言葉の意味どおり雨雫に例えました。
しずくちゃんのご冥福をお祈りいたます。