飼っている猫が亡くなり 荼毘に付したいとの電話があったのはその日の夕刻7時半になろうかという頃でした。ご依頼者様とご相談させていただくなかで、一時間半後の9時過ぎにご自宅にお伺いさせていただき、その日のうちにお火葬させていただくことになりました。
ご依頼者様のご自宅は海に近い住宅街にありました。午後の9時ともなれば出歩く人はいません。本当に静かな夜です。玄関で迎えてくださったのはシニア世代のご夫妻でした。そのご夫妻の傍らには小柄な猫ちゃんが毛布に包まれ横たわっております。ペルシャチンチラという種で名前はミュウ。ミュウちゃんは癌を患っていたようで美しく白い長い毛の輝きは未だ失われてはいないもののかなり痩せ細っていました。この後、ご夫妻にはお清めの儀式をお手伝いいただきました。
お火葬は海の近くで行いました。遠くで花火に興じる若者の声がしています。潮の香りに包まれたなかでの旅立ち。生きとし生けるものの生まれ故郷であるこの大自然・・・その息吹を感じるこの場所でミュウちゃんは何を想い夜の空へと昇ってゆくのでしょう。
ご焼骨を終え、お骨の全てを拾い集め終える頃には11時を周っておりました。この後 お骨をパウダー状にさせていただき ご夫妻の元にお返しいたします。ご返骨までもう少し。今しばらくご夫妻にはお待ちいただくことになります。
・・・
ようやく全てを終えてご返骨に今一度ご自宅に伺うと玄関の上がりにはもう一匹の猫ちゃんが背筋を伸ばして座っていました。とっても奇麗な猫ちゃんです。この猫ちゃん、ご夫妻とともにお友達の帰りをずっと寝ないで待っていたのでしょうか。ご夫妻には夜遅くまでお休みになられずお待ちいただき心より感謝申し上げます。