お仕事日録

元盲導犬ラブラドールレトリバー ニック君の旅立ち

ラブラドールレトリバーのニック君、11歳が旅立ちました。

 

盲導犬の役目を終えた後、ニック君はこちらのご家族の元にやってきました。寂しがり屋のニック君は飼い主のママさんといつも一緒に過ごしていました。さすが 元盲導犬のニック君、お散歩の時はいつもママさんのナイトとして大活躍していたようです。現役の頃も大変優秀だったとお聞きしました。またニック君は木越町にあるペットちゃんも同伴できるバリアフリーのカフェ「ハフネテラス」の看板犬でもありました。

 

 

ニック君にはファミリーがいます。同じラブラドールで盲導犬の役割を早くに終えた年下の女の子ファラちゃんとオス猫の湯助(ユースケ)君です。ニック君が迎えられて間もない頃、お家のリフォームが始められると改装中の現場で生まれたばかりの猫の赤ちゃんが見つかりました。お風呂場のかなり厄介な場所だったものですからパパさんはすぐに消防士さんを呼んでその猫を助けてもらいます。その後、猫は湯助と名付けられお家で飼われるようになりました。ニック君は、そんな経緯で家族の一員となった湯助君や可愛いファラちゃんを常に見守る優しく賢いお兄さん犬だったのです。

 

ご葬儀には、ご家族さまであるパパさん、ママさん、お兄さん、お嬢さん、ファラちゃん、湯助君、他にも 以前の飼い主さまと現役の盲導犬ラブラドールのハウエル君、そしてママさんのお友達も加わりました。お拭き清めからお勤め、ご焼香と続く中、2匹のラブラドール、ファラちゃんもハウエル君もとっても静かに伏せの姿勢で見守ってくれていました。そんな中、湯助君は大きなゲージの中でソワソワしているのです。特にお拭き清めが始まると、僕のお兄ちゃんに何をするんだと言わんばかりにゲージの中 行ったり来たりを繰り返し、訝しげにこちらの様子を伺っています。ご家族さまにはそうなるのが分かっていて湯助君はひとり隔離されていたのかもしれません。湯助君、ゴメンね。ニック君の側に来させてやれなくて・・

 

 

ご葬儀も終盤に差し掛かり、皆さまは炉前で最後のお別れをなさいました。崇高な使命を持ってこの世に生を受け その役割を十二分に果たし命を全うしたニック君。私の中にもひとりの人間として感謝の気持ちがどこからともなく湧いてきて目頭が熱くなりました。人の心に寄り添い続けたニック君を身近に見てこられた皆さまにあられては、そのお気持ち 如何ばかりかと存じます。

 

炉前でのお別れにはファラちゃんも同席していました。先ほどまでお利口さんにしていたファラちゃんが私どもがニック君を炉に収めるとあの大きな体でおもむろに火葬車に乗り込んできたのです。予想外の行動にビックリでした。いつまでもニック君の側にいたいと思ったのか 皆でお散歩にお出かけするとでも思ったのかは分かりませんが、ニック君とお別れすることになるなんてことはファラちゃんとっては想像だにしなかったことのようです。ではなく もしや感じるものがあったとすれば、最後にニック君と面と向き合ってお別れがしたかったのかなとも思いました。

 

お骨上げは皆さんでお家の中でとり行いました。ご家族さまばかりでなくご友人の方々もニック君のお骨を持ち帰り 其れのご自宅でご供養したいとのことで小さなお骨壺をいくつかご用意させていただきました。ニック君は皆さま方と私が考える以上にとっても深い愛情で繋がっていたのですね。天の使いとしてやってきたニック君。どうぞ今は神様の膝元でゆっくりとお休みください。そして最後に一言。これまで本当に有難うございました。