お仕事日録

ティーカッププードルのポンズちゃんが架けた虹

ティーカッププードルのポンズちゃんが12歳で旅立ちました。

 

その日、ポンズちゃんはパパさまの帰りを今か今かと待っていました。そろそろパパさまの帰ってくる頃  ー 嬉しくてたまらないポンズちゃん。そんな時、玄関に聞きなれたパパささまの車の音が聞こえてきたのです。ポンズちゃんは大好きなパパさま会いたさ一心で少しだけ開いていた扉を鼻先で押し開けて外に飛び出してしまいました。そして不運にもたまたま通りかかった軽自動車に跳ねられてしまったのです。

 

ポンズちゃんはこちらのお宅のご家族の一員になる前、少しの期間だけ他のご家族の元で過ごしていましたが、理由あってそのご家族の元を去り、とある動物病院に預けられていました。その後 その動物病院の院長先生のご友人であるパパさま一家の元にやってきたのです。当時はこちらのご子息がまだ幼稚園生で、以降これまでポンズちゃんとご子息は兄弟のように育ってきました。

 

今、祭壇を前にして横たわるポンズちゃんの拭き清めに涙を拭っておられるご子息、そのご様子に目頭が熱くなりました。立派に成長されたご子息のお隣ではおばあちゃまが寂しそうにポンズちゃんに視線を向けておられます。おばあちゃまとポンズちゃんも大の仲良し。おばあちゃま曰く、おばあちゃまの話すことはほとんど理解していたとのこと。また、亡くなったその日の夕刻でした。おばあちゃまは空にポンズちゃんの形をした雲を見つけられたのです。そしてその雲はひと息 おばあちゃまの頭上から消えることがなかったそうです。

 

お拭き清めの後はお別れの式がとり行われました。そしてご出棺。ご自宅の車庫でご家族さまの手により炉前にお花が手向けられました。ポンズちゃん、おばあちゃまとは車庫で最後のお別れとなります。お火葬はパパさまが所有するご自宅から少し離れた私有地でとり行います。その場所はその動物病院とは目と鼻の先。そこまでの道のりはパパさまが自家用車で火葬車を先導していただくこととなりました。

 

ご自宅を離れると我々の進行方向になんと大きな虹かかかっていました。左折、左折と繰り返しても不思議とその虹は我々の正面から外れることはありません。数分そのまま走って目的地に到着するとなんと虹の左側の端が正面に来ていたのです。ご自宅を出る時は右側の端が正面でしたので、ずっと真向かいに虹を見ながらここまでやってきたようなのです。昨夜 おばあちゃまが見つけられた雲のようにポンズちゃんはパパさまとご子息に感謝を伝えているのでしょうか。

 

 

 

パパさまとご子息は、冷たい風が舞う中、ポンズちゃんが空へと昇る瞬間をお見届けくださいました。その後 お二人はご自宅に戻られおばあちゃまとともにお骨となったポンズちゃんの帰りを待ちます。

 

暫くすると辺りが暗くなってきました。道路の向こうに見える動物病院も診療時間を終えたみたいです。ポンズちゃんにとっては故郷といえる動物病院です。パパさまが仰っておられましたが、それでもパパさまに貰われて以降は一度も動物病院にかかることはなかったそうです。そんなすこぶる元気だったポンズちゃん、だからこそご家族様にもポンズちゃんにとってもほんとうに悲しいお別れでした。胸が痛いです。さよならともありがとうとも伝えられずに瞬きも出来ないほどあっという間に旅立ったポンズちゃんでした。だからだからこそきっと自らの気持ちを何としてでも伝えたかった ー それがあの虹だったのですね。そうなんでしょ、ポンズちゃん。

 

ポンズちゃんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。