お仕事日録

お家を守り続けたサバトラ猫のナッキーちゃん

グレーと白の縞模様が美しい、ふわふわのサバトラ猫、ナッキー(菜姫)ちゃんが、16年の生涯を閉じました。

 

 

ナッキーちゃんとご家族の出会いは、ご子息が10歳の時、道端にひとりぼっちでいた仔猫を見つけて保護されたことから始まります。母猫から離れたばかりの小さな命。仔猫は、最初はなかなかご飯を食べてくれずご家族様は心を痛めておりました。そんな中、試しにさつまいもに牛乳を混ぜたものを与えると仔猫は少しずつ口にしてくれるようになったのでした。徐々に本来の体力を取り戻していく仔猫はご子息からナッキーというお名前を貰うとご家族皆の愛と温もりの中でスクスクと育っていきました。その時以来、さつまいもはナッキーちゃんの大好物になりました。

 

忘れもしません。昨年の元旦、大地震が石川県を襲いました。実は、ナッキーちゃんは あの地震を経験しているのです。ご自宅は半壊しご家族様はご自宅からほど近いマンションに避難され今に至ります。そんな中、ナッキーちゃんは娘猫ちゃんと一緒にご自宅に残ると今日までの1年間、ずっとお家を守っていました。マンションではペットを飼うことが出来ないためご家族様は泣く泣く猫ちゃん達と離れて暮らさざるを得なかったのです。ママ様は、ご飯のお世話はもとよりお時間の許す限り猫ちゃん達の様子を見に行かれていたのですが、その中での母猫、ナッキーちゃんのお旅立ちだったのです。

 

 

ナッキーちゃんの最期の時 —— ママ様は仮の住まいからご自宅に戻るとナッキーちゃんに寄り添い看病しておられました。しかしながら、ほんの少しの間、お家を離れなければならず、ママ様は「ナッキー、少し待っていてね。すぐに帰ってくるから」と声を掛けられるとご自宅を出られたのです。暫くしてママ様は戻られたのですが、ナッキーちゃんはママ様のお顔を見てほっとしたのか おもむろにママ様のお膝によじ登るとそのまま腕の中で静かに旅立っていきました。

 

ご家族にはもう一つ大きな悲しみがございました。地震の後、お元気だったママ様のお父様が体調を崩され ご家族の元を旅立たれたのです。ご家族様にはお悲しみの全く癒えない中でのこの度のナッキーちゃんのご逝去、ご家族様のお気持ちを思うとお慰みの言葉も見つかりません。
お火葬は、お住いのマンションから離れてご自宅の敷地でママ様とご子息のお立合いの下、とり行われました。お住まいになるには危険ですが、電気は通っているとのことで電源をお借りすることが出来ました。最後のさよならにご自宅の中にいる娘猫ちゃんに今一度 会ってお別れしたナッキーちゃん、愛おしいママ様とご子息に見守られる中 ゆっくりと空へと昇っていきます。ナッキーちゃん。16年間、ご家族にたくさんの幸せを届けてくれてほんとうにありがとう。これからはおじいちゃまとご一緒に地上のご家族と娘猫ちゃんを遠い空から見守っていてね。

 

お火葬が終盤に差し掛かる頃、5時を知らせるチャイムが街に響きます。これから私どもでトレーにお骨を集めさせていただき、ご家族様にはマンションのほうで「お骨上げ」をしていただくこととなっています。

 

 

ご自宅に残された娘猫ちゃんはこのままではひとりぼっちになるためママ様のご友人のお世話になるとのことで母であるナッキーちゃんもきっと安心していることでしょう。そして今頃、ナッキーちゃんは大好きだったおじいちゃまや先立っていった息子猫ちゃんとの再会を果たしているはず。もしかしたらお旅立ちに際してご家族様が持たせてくれたお孫ちゃんのお手紙や皆のお写真をおじいちゃまにお見せしている頃ではないでしょうか。

 

ナッキーちゃんのご冥福をお祈りいたします。