お仕事日録

劣悪環境から救われた猫のフォルテちゃん 最後まで頑張りました

陽が沈みゆく住宅街。時は午後の6時半。猫のフォルテちゃんのご葬送に飼い主様宅を訪ねます。

 

ご自宅ではご夫妻がお待ちいただいておりました。奥様の傍らで痩せ細った体を横にしているフォルテちゃん。何か重い病気を患っていたのでしょうか、その亡き姿はとても痛々しくもありました。

 

「この子は本当に可哀想な子だったの」飼い主のママさんはフォルテちゃんに潤んだ視線を向け、訥々と話を切り出されました。過去を思い起こしまた辛くなる、ママさんのお話しぶりはまさにそのようでした。ママさんが仰るには、フォルテちゃんは「多頭飼育崩壊」によりお家にやってきた子なのです。当時は狭い狭い中にずっと閉じ込められていたとのこと。多頭飼育崩壊とは、多数飼育した飼い主が、無秩序な飼い方による異常繁殖の末に飼育が不可能になる現象を言いますが、当時の飼い主様はフォルテちゃんを連れてママさん宅にやってきて半ば捨てるようにしてフォルテちゃんを置いて行かれたようなのです。フォルテちゃんには生まれつきの障害があるのですが、それでも優しいこちらのママさんならば決して見捨てることはしないだろうとその方は考えておられたみたいです。

 

こちらのお家にやってきた経緯がどうであれ ママさんにはフォルテちゃんを見捨てることなど到底出来ません。ママさんは引き取りを決意。こうしてフォルテちゃんはこちらの家族の一員になりました。お家に来てからは今までの飼育放棄状態からは想像できないほど幸せな時を過ごしたフォルテちゃんでありました。

 

 

しかし、3年前の今頃、フォルテちゃんに癌が見つかります。動物病院の先生にも「フォルテちゃんは今度の桜は見られないでしょう」と言われてしまいます。それがなんとママさんの看護のお陰で奇跡的にも今年の桜も見ることが出来ました。その後、桜が散り始めるとフォルテちゃんの具合が段々と悪化し始め、そしてとうとう、ここに命尽きる日を迎えるのです。フォルテちゃん、享年11。最期の瞬間は優しいママさんの懐、そう 絶望の淵から救い出してくれた優しいママさんの腕の中でした。

 

最後の最後までフォルテちゃんの事を思いお守りいただいたママさんご夫妻には本当に頭の下がる思いです。フォルテちゃん!ママさんたちも凄いけど、名前の通り強く生き抜いた君も本当に凄いと思います。

 

フォルテちゃんのご冥福をお祈りいたします。