黒猫の男の子、ジジちゃんが旅立ちました。
8年前、こちらのお宅のご近所で、目も開いていないミルクも飲めない掌に乗る程の仔猫が2匹、保護されました。ご近所の方が困り果て、こちらのママ様に助けを求められたのです。ママ様は取るものとりあえず2匹の仔猫を病院に連れて行かれました。残念ながらそのうちの1匹は暫くの後亡くなってしまうのですが、もう1匹は何とか命を取り留めました。命を繋いだ仔猫にはその後貰い手が見つからず不憫に思ったママ様はその子を引き取る決意を固めるのでした。こうしてママ様に助けられた1匹の雄の仔猫はジジと名付けられママ様ご家族の一員となりました。きっとジジちゃん自身がこちらのお宅を選ばれたのだと思います。
ごちらには1年先輩の先住猫ちゃんがいます。少し大人しいジジちゃんとは対照的な好奇心旺盛なお姉ちゃん猫です。幼いジジちゃんとうら若きお姉ちゃんは初対面から今日まで実の姉弟のように過ごしました。
ジジちゃんはとっても食いしん坊でした。朝もお腹を空かして起きてきては「早くご飯をくださいにゃー」と言わんばかりにお皿を叩いてパパ様、ママ様にお知らせするのが日課です。ママ様がデスクでお仕事をしている時はお隣のテーブルがジジちゃんの定位置です。「早くお仕事おわってくれにゃいかなー。ママに甘えたいにゃー」といつもうずうずしながら待っていました。
そのジジちゃんは今、そのテーブルで直ぐにも起きてきそうな穏やかなお顔で眠っています。遠方に単身赴任されているパパ様も車で3時間以上の道のりをお戻りになられました。何があったのでしょう。ジジちゃんは急に具合を悪くし病院に入院しました。原因は分かりません。少し回復したのでしょう、退院をして今日 戻ってくるはずでした。しかし届いたのは悲しい知らせだったのです。あまりに突然のお別れ。ご家族様にあられてはお哀しみ如何ばかりかと唯々お察し申し上げるばかりです。心よりご冥福をお祈りいたします。
お拭き清めには、ジジちゃんが天国に痛みを持って行かないようにとの願いを込めて痛みを和らげる精油フランキンセンスを使わせていただき、お三方にもお別れのひと拭きをお願いいたしました。その後、ジジちゃんを取り囲むようにして読経される中、皆様にはご焼香をしていただきました。
いよいよご出棺です。棺をお運びしながら玄関を出ようとすると奥の部屋からお姉ちゃん猫がジジちゃんとの最後のお別れにやってきました。その様子をご覧なられたおばあちゃまは、「いつもは誰かがやってくるとすぐに飛び出してくるのに。ようやくお顔を見せたね。あの子は全てわかっているのだと思う」とお話しくださいました。
お火葬は大好きなご家族と過ごしたお家で、いつもお二階から眺めていた公園のお隣でとり行いました。炉前にお花を手向けられるおばあちゃま、ママ様は泣き崩れながらも最後のお別れに臨まれました。そして崩れ落ちそうなママ様を優しく支えられていたパパ様。お仕事の都合でお見送りできなかったお子様方も遠くからこのお時間、ジジ君に思いを馳せておられることでしょう。そんなご家族様を肌に感じて、きっとジジちゃんはご家族の皆に出逢えた幸せを今また嚙みしめているのではないでしょうか。こうしてジジちゃんは静かに夜の空へと昇って行きました、ご家族様の心に愛しさとたくさんの思い出を残して。
ママ様は以前、ご葬送のお手伝いをさせていただいたパピヨンのアンジュちゃんのママ様のお友達です。ご縁をいただき心から感謝申し上げます。ジジ君を失ってママ様はかなりご憔悴されていました。
アンジュちゃんのママ様もママ様を気に掛けてくださることと思います。ママ様にジジ君との思い出を哀しみに襲われることなく楽しく語れる日が一日も早く訪れますように。