お仕事日録

パピヨンのウィッシュ君。天寿を全うして安らかに

享年17歳。パピヨンのウィッシュ君が老衰で亡くなりました。

 

ご自宅にお伺いするとウィッシュ君は穏やかに眠っていました。お通しされたお部屋でお待ちいただいていたご家族様はお父様、お母様、ご子息様がおひとり。その輪の中でウィッシュ君はお年を感じさせない艶やかな毛並みを輝かせています。ご家族様には心よりお悔やみ申し上げます。

 

後ろ脚が弱ってきて去年の今頃にはもう立つのもやっという状態のウィッシュ君、日々衰えてゆく体力に抗う毎日を過ごす中、半年が過ぎた頃でしょうか、ついには寝たきりとなってしまいます。ご家族様は自らの力で寝返りがうてないウィッシュ君を床ずれにならない様に頻繁に体位を変えるなど日々努めておられました。そしてお旅立ちの日が近づくにつれ、食欲も落ちて終末にはお水もお口に持っていくとペロペロと舐めるだけになってしまうのでした。そしてとうとう昨日、ウィッシュ君は穏やかな最期を迎えるのです。

 

元気な頃のウィッシュ君はどうでしょう。お母様の手を噛んだりもしました。またご子息方がリビングで横になっていると遊んで欲しいウィッシュ君はお顔を舐めて遊ぼうよ!遊ぼうよ!起きて!と何度も起こそうとしていたみたい。活発で遊び好きな男の子だったようです。

 

ご家族様によるお拭き清めが始まりました。お拭き清めの最中にはもうひとりのご子息様がお仕事からお帰りになられ、清めの儀に加わられました。ウィッシュ君。こうして大好きな家族に拭き清められて最後までほんとに幸せだったね。大きな病気もせずに犬生を全うするなんて稀にみる孝行息子だね。

 

ご家族様には、最初、昨日中にお火葬をお願いしたいとのご要望がございました。しかしながら私どもに先行のご依頼があり、止む無く本日この時間のご葬送となったのでした。ご夫妻様にはもうお一人、お嬢様かどなたか お子様がおられるのではないかと存じますが、お仕事或いはご家庭の都合かで今日のこのご葬送に来られなかったのではないでしょうか。でもね、ウィッシュ君。きっとお嬢様も離れた場所から君を想って祈ってくれているはずだから安心してね。

 

お火葬はご自宅の駐車場でとり行いました。ご家族皆様には炉前にお集まりいただき、お火葬は厳かな中に始まりました。涙を溜めていたご子息は小さなブランケットを携えておられました。そう言えばお拭き清めの間中もご子息はずっとそのブランケットを手にされておられたのです。おそらくウィッシュ君が使っていたブランケットではないでしょうか。

 

お火葬が始まり暫くするとご子息はそのブランケットを手にご自宅を出て夜の住宅街に歩いて行かれました。お火葬車の横を通り過ぎるご子息の寂しそうな背中に私どもは声すらお掛け出来なかったです。ご子息はきっとウィッシュ君とよく散歩したあの道この道を巡り辿りながらその楽しかった思い出を振り返っておられるのではないでしょうか。

 

 

そんなご子息の姿をみていたのは私どもばかりではありません。ウィッシュ君もそう高くない所から見下ろしていたことでしょう。もしかするとウィッシュ君は天国までの列車を一便遅らせ お兄様の足元にやってきているのではないでしょうか。あの日のように歩幅を合わせて楽しげに。。

 


ご子息の優しさに目頭が熱くなるばかりの私どもでありました。ウィッシュ君のご冥福をお祈りいたします。