お仕事日録

ボダーコリー モッシュ君のお旅立ちに立ち合われた可愛らしいお嬢さま

ボーダーコリーのモッシュ君が旅立ちました。享年10歳でした。

 

 

モッシュ君は3年ほど前から心臓病を患っていました。心臓のお薬の影響で腎臓や肺も少しずつ弱りつつありました。とは言え 食欲も旺盛で元気に過ごしていたのです。それが急なお旅立ちとなってしまいご家族さまにはご心痛、如何ばかりかとお察し申し上げるとともに心よりお悔やみ申し上げます。

 

モッシュ君の身に何が起こったのでしょうか、普段と変わらず過ごしていたのに。悔しさばかりが募るもはっきりとした理由は分かりません。ただひとつ挙げるとすればこの度の能登半島地震です。モッシュ君のお家は震源となった能登沖から被害の大きかった内灘方面へと続く海にもほど近い場所に位置しているのです。もしかしたらこの度の地震がモッシュ君の心臓になにがしかの宜しくない影響を及ぼすことになったのかもしれません。

 

モッシュ君には可愛い妹と弟がいます。飼い主ご夫妻のご長女、2歳になるお嬢さまと生まれて1ケ月の赤ちゃん、そして4歳のジャックラッセルテリアちゃんです。2歳のお嬢さまは私どもがお家に到着した時もいの一番に出迎えてくれました。そして私どもにもフレンドリーに可愛らしく話しかけてくださいました。そのお嬢さまがお生まれになった当時、モッシュ君は赤子のお嬢さまに興味津々、鼻先を寄せながら包み込むような優しさでお家に迎えられたのでした。まさにお兄ちゃんの包容力で。

 

私どもがモッシュ君に手を合わせているとお嬢さまはいつもと違う空気に少し不安になられたのでしょう、私どもにいろいろとお尋ねになられるのです。「どうしてモッシュは動かないの?」「大好きなガムをあげてもどうして食べないの?」に始まり「モッシュはどこに行くの?」「私は天国についていけないの?」に至るまで矢継ぎ早やにご質問されるのでした。あんなに元気だったモッシュ、どうなっているんだろう?とお嬢さまなりに一生懸命考えておられるのです。最後のご出棺には、お嬢さまはパパさまとママさまがモッシュ君の枕元にお野菜のお弁当や大好物のガムを供えられるのをじっと見つめながらも「もうモッシュとは遊べないの?」とママさまに抱きつき悲しそうなお顔をみせられるのでした。

 

お火葬はご自宅の広い駐車スペースでとり行いました。青い空に駆け上っていくモッシュ君。私どもには辛いところを見せまいとされていたパパさまも目から大きな涙を零され、ママさまにおかれては暫くはその場を離れず風に乗って行ったモッシュ君の行方を目で追っておられました。

 

お火葬が終わり炉前へと集まられたご家族さま。お嬢さまもパパさまと一緒にお越しいただきました。ご焼骨後の変わり果てたモッシュ君をご覧になられたお嬢さま、かなりのショックのご様子でした。私どもを咎めるように「大好きだったモッシュをこんなにして!!」と強く叱責されたのです。そうです、お嬢さまはモッシュ君がすぐに帰ってきてくれると思っておられたのです。「ほんとうにごめんね」それしか言葉が見つからない私達たち。元気なモッシュ君をお返し出来うるならば最高なのだけれど。

 

戸惑うお嬢さまの様子を静かにご覧いただいていたパパさまは「ダダとママがこうしてほしいとお願いしたんだよ」とお嬢さまを諭されるとお嬢さまも少し納得されたようでした。ご粉骨後、可愛く設えたお骨壺に収められたモッシュ君をご夫妻にお返しするとお嬢さまは「ありがとう」と私どもにお礼を言ってくださったのです。少しばかり複雑な面持ちは変わらずともお嬢さまの一言にどこか救われた気持ちになった私たちでありました。

 

潮の香りが馨しい心地よい風、遠くに煌めく水平線と青い空。海にお似合いの白いモダンなお家。海辺の優しい日々を丸ごと詰め込んだような今日のこの風景、そして素敵なファミリーが幸せだった君をまさに象徴しているよ。どうかどうかモッシュ君、愛らしくお育ちになったお嬢さまをこれからも見守っていてください。そして生まれたばかりの妹ちゃんのことも。

 

モッシュ君のご冥福をお祈りいたします。